賃貸物件を借りる際には、「敷金」「礼金」「更新料」といった費用が発生することが一般的です。これらの費用は、入居時や契約更新時に必要となるもので、賃貸契約における重要なポイントとなります。
賃貸仲介エージェントとして働く際、これらの費用に関する知識は必須です。お客様からの信頼を得るためには、それぞれの費用の意味、仕組み、そして実際にどう対応すれば良いかをしっかりと説明できる力が求められます。
この記事では、エージェント初心者の方にもわかりやすく、敷金・礼金・更新料の基本と実務での注意点を丁寧に解説していきます。
敷金とは?退去時に戻ってくるお金の正体
敷金とは、入居時に借主が貸主(大家さん)に預ける保証金のようなもので、家賃滞納や部屋の損傷といったトラブルがあった場合に備えるための費用です。入居中に何も問題がなければ、退去時に全額または一部が返金されます。
敷金の役割と返金の仕組み
- 敷金は預かり金であり、貸主が損害に備えて保管するものです。
- 退去時に部屋の状態を確認し、必要な修繕費用がある場合は敷金から差し引かれます。
- 残額がある場合は、それが返金されます。

敷金が返金されない主なケース
- タバコのヤニ汚れ、ペットによる傷や臭いがある場合
- 家賃の滞納があった場合
- 借主の過失による破損・汚損がある場合(例えば壁に大きな穴を開けた等)
エージェントとしての説明ポイント
- 「必ず返ってくるお金」と誤解されないよう注意を促す
- 原状回復の範囲や借主負担の修繕について、国交省ガイドラインなど信頼できる資料をもとに説明
- 物件によってはクリーニング費が差し引かれる旨を事前に伝えておく
礼金とは?なぜ払うの?払わない物件もある?
礼金とは、入居時に借主が貸主へ支払う「お礼」のような費用です。敷金と異なり、退去時に返金されることはありません。日本独自の慣習として根強く残っている費用で、近年では「礼金なし」の物件も増えてきています。
礼金の起源と意味
- 昔は入居させてもらうこと自体がありがたいという背景から、感謝の意味を込めて支払っていた
- 法的義務はないが、今でも1ヶ月分支払うことが多い
礼金ゼロ物件の注意点
- 初期費用は安く見えるが、家賃が相場より高く設定されていることがある
- 更新料や管理費で補填されている可能性がある

エージェントとしての説明ポイント
- 「礼金ゼロ=お得」とは限らないと伝える
- 総合的な費用(初期費用+毎月の家賃+更新料など)で判断してもらうことが大切
- 貸主の意図(すぐに入居者を決めたいなど)を加味して物件の背景も説明できると信頼度アップ
更新料とは?いつ・いくら・誰が払うの?
更新料とは、賃貸契約を延長する際に支払う費用で、特に東京都など首都圏では一般的な慣習となっています。契約期間満了時に更新するためには、家賃の1ヶ月分程度の更新料を貸主に支払う必要があるケースが多いです。
更新料の仕組み
- 一般的には2年契約で、更新時に発生
- 家賃1ヶ月分が更新料として請求されることが多い
- 管理会社や仲介会社から、別途「更新事務手数料」が請求されることもある

更新料が免除されるケース
- 法人契約などで特別な契約内容がある場合
- 初期費用の中に「更新料込み」と明記されている場合
- 地方エリアではそもそも更新料が存在しないことも多い
エージェントとしての説明ポイント
- 契約書に明記されている更新料の内容をしっかり確認する
- トータルコストに含めて「長く住むほど費用がかさむ」ことを伝える
- 契約更新時の手続きや時期についても、わかりやすく説明
敷金・礼金・更新料の相場感と都内での違い
物件によって異なるこれらの費用ですが、目安となる相場を知っておくことで、物件提案の際に説得力のある説明が可能になります。
東京都心エリア(例:目黒・渋谷・世田谷など)
- 敷金:1ヶ月分(保証会社利用の場合はゼロも)
- 礼金:1ヶ月分(ゼロ物件も増加中)
- 更新料:1ヶ月分(2年ごと)
都下や地方都市の傾向
- 敷金:0〜1ヶ月分
- 礼金:0〜1ヶ月分(ゼロが主流)
- 更新料:なし〜0.5ヶ月分程度
エリアによっては敷礼ゼロ・更新料なしの物件も多く、単身者や若年層向けの物件では初期費用を抑えたいニーズが強まっています。

【実務に活かす】お客様に説明する際のポイントと注意点
物件紹介の際に、ただ「敷金1ヶ月・礼金1ヶ月です」と伝えるだけでは不十分です。なぜその費用が発生するのか、相場と比べて妥当かどうか、お客様にとってのメリット・デメリットを丁寧に伝えることが重要です。
エージェントとして押さえるべき視点
- 「安さ」だけでなく「費用のバランス」を伝える
- 入居から退去までを見据えた「トータルコスト」での提案を心がける
- トラブル事例や成功事例を交えて話すことで、お客様の不安を軽減できる
信頼されるエージェントになるためには、知識の豊富さだけでなく、「伝え方の工夫」も大切です。
【Q&A】よくある質問とエージェントとしての答え方例
Q. 敷金って必ず戻ってくるの?
A. 原則として問題がなければ返金されますが、汚れや傷など借主の過失がある場合は、その分が差し引かれることがあります。
Q. 礼金ゼロって、何か裏がありますか?
A. 一概に「裏がある」とは言えませんが、家賃が少し高めに設定されていたり、更新料で調整されているケースもあるため、全体的な費用を比較して判断することが大切です。
Q. 更新料って絶対に払わないとダメですか?
A. 地域や契約内容によります。首都圏では一般的ですが、地方では更新料がない場合もあります。契約書の内容をしっかり確認することが重要です。
まとめ|信頼される仲介エージェントになるために

敷金・礼金・更新料は、賃貸契約の費用構成の中でも特に重要で、お客様の判断に大きく影響する要素です。
初心者エージェントでも、これらの意味や仕組みを正しく理解し、わかりやすく説明できるようになることで、お客様の信頼を得やすくなります。知識を積み重ねることが、営業力アップへの第一歩です。
実際の接客の中で経験を重ねながら、自信を持って案内できるエージェントを目指していきましょう。