不動産トラブル回避帳 賃貸編

【賃貸の騒音トラブル】管理会社への上手な伝え方|記録のとり方・伝えること・やってはいけないことを宅建士が解説

夜中に響く足音。壁越しの話し声や音楽。毎朝早くに鳴る洗濯機。

集合住宅で暮らしていると、音の悩みは避けにくいものです。国土交通省のハンドブックが紹介している調査でも、マンションの居住者間のマナートラブルでいちばん多いのは「生活音」で、43.6%でした(令和5年度マンション総合調査)。

先に結論を書きます。

騒音に悩んだら、直接言いに行かず、まず管理会社に相談しましょう。そのときは「うるさい」と伝えるだけでなく、いつ・どんな音が・どれくらい続いて・暮らしにどう響いているかを、記録にして伝えること。それが、管理会社に動いてもらういちばんの近道です。

この記事では、記録のとり方と伝え方、管理会社がとる対応の流れを、賃貸の実務に携わる宅建士の私がまとめます。

1. 直接言いに行かないほうがいい理由

国土交通省の「音と向き合うためのハンドブック」では、音に悩んだときは、相手を直接訪ねず、まず管理会社や大家さんに相談するよう勧めています。

理由はいくつかあります。

  • 音の出どころは、隣とは限らない:建物の構造によっては、音が床や壁を伝わって、思わぬ部屋から聞こえることがあります
  • 相手が気づいていないことが多い:足音や生活音は、出している側には聞こえにくいものです
  • 感情的になりやすい:直接のやりとりは、こじれると関係の修復が難しくなります

壁を叩き返す、張り紙をする、といった対応も、かえってトラブルを大きくします。

2. まず、記録をとる

管理会社に相談する前に、1〜2週間ほど記録をとっておきましょう。

記録すること例
日付と時刻10月5日 23:30〜0:15
音の種類足音(ドスドス)、話し声、音楽、洗濯機、ドアの開け閉め
聞こえる方向上の階から、右隣の壁から(と感じる)
続いた時間と頻度30分ほど、ほぼ毎晩
暮らしへの影響眠れない、在宅の仕事の会議に支障

スマートフォンのメモに書くだけで十分です。できれば録音もしておくと、音の大きさや種類を伝えやすくなります。

3. 管理会社には、こう伝える

管理会社に騒音を相談するときに伝えること。記録する(いつ・どんな音が)、影響を伝える(暮らしへの影響)、希望を伝える(してほしい対応)。

「うるさいので何とかしてください」だけだと、管理会社も、どの部屋に、何を注意すればよいか判断できません。次のように伝えると、動いてもらいやすくなります。

伝え方の例

○○号室の△△です。2週間ほど前から、夜23時ごろから深夜1時ごろまで、上の階から足音のような「ドスン」という音が、ほぼ毎晩聞こえます。日時の記録を添付します。睡眠に影響が出ているため、まずは全戸向けの注意の掲示をお願いできないでしょうか。なお、私からの相談だということは伏せていただけると助かります。

ポイントは、

  • 事実(記録)を伝える:「いつも」「ずっと」ではなく、日時で
  • 影響を伝える:眠れない、仕事にならない
  • 希望する対応を伝える:まずは掲示で、など
  • 匿名を希望するなら、そう伝える

電話で伝えたあと、記録をメールで送っておくと、言った・言わないにならずに済みます。

4. 管理会社がとる対応の流れ

一般的には、次のように段階を踏んで対応します。

  1. 聞き取り:相談者から、音の状況を聞く
  2. 全戸への注意:掲示板への貼り紙や、全戸へのお知らせの投函。特定の部屋を名指ししない
  3. 個別の連絡:改善しなければ、音を出していると考えられる部屋に、個別に連絡する
  4. それでも改善しないとき:大家さんと相談のうえ、契約にもとづく対応を検討する

最初の掲示だけで収まることも少なくありません。すぐに解決しなくても、段階を踏んでいると考えて、改善しなければ記録を添えて再度相談しましょう。

5. 管理会社が動いてくれないときの相談先

  • 消費生活センター(局番なしの188):賃貸住宅のトラブル全般を相談できます
  • 住まいるダイヤル(公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター):住まいの相談窓口
  • 弁護士や法テラス:損害賠償などを考えるとき

国交省のハンドブックでも、消費生活相談窓口と住まいるダイヤルが相談先として紹介されています。

6. 「受忍限度」という考え方

生活音は、ある程度はお互いさまです。裁判では、音が「受忍限度(がまんすべき範囲)」を超えているかで判断されます。決まった数値の基準があるわけではなく、音の大きさ、種類、時間帯、頻度、続いた期間、建物の構造、相手の対応などを総合して判断されます。

たとえば、上の階の子どもが走り回る音について、深夜にも及び、ほぼ毎日続き、相手の対応も不誠実だったとして、受忍限度を超えると判断した東京地裁の裁判例(平成19年10月3日判決)が紹介されています。

裁判は最後の手段です。まずは記録をとり、管理会社を通して話し合う。それがいちばん現実的な解決の道です。

7. 部屋選びの段階でできること

これから部屋を探す人は、音のことも考えておきましょう。国交省のハンドブックで紹介されている調査では、上下階や隣の音に対する満足度は、賃貸の共同住宅で48.9%、賃貸の木造共同住宅では38.2%でした。

  • 建物の構造を確かめる:木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造
  • 最上階・角部屋を選ぶ:音が伝わる面が少なくなる
  • 内見は、できれば夜にも:周りの生活音を確かめる

8. まとめ

  • 騒音に悩んだら、直接言いに行かず、管理会社に相談する
  • 音の出どころは隣とは限らない。決めつけない
  • 日時・音の種類・続いた時間・影響を記録してから相談する
  • 「事実・影響・希望する対応・匿名の希望」を伝える
  • 管理会社は、全戸への注意→個別連絡と段階を踏んで対応する

ジカビーの一言

音の悩みは、目に見えないぶん、ひとりで抱え込みやすいものです。でも、がまんを重ねるほど、気持ちは追い詰められていきます。

記録をとると、自分の気持ちも少し整理されます。「このくらいの頻度なんだ」と分かるだけで、冷静に相談できるようになります。ひとりで悩まず、まずは管理会社に一報を。

賃貸の契約やお金のことで迷ったら、LINEでご相談ください。

参考:国土交通省「音と向き合うためのハンドブック(共同住宅で快適に暮らすための音への気づきと工夫)」、東京都「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」第4版(2022年12月)。東京地裁 平成19年10月3日判決は、マンション管理業協会の資料で紹介されたものです。

連載「借りる前に読む、賃貸の話」第3章(入居中のトラブル)#20。連載の目次を見る

-不動産トラブル回避帳, 賃貸編
-, , , , ,