不動産トラブル回避帳 賃貸編

【二人入居・楽器・SOHO】賃貸で「書いていないことは許されていない」|通知・承諾・禁止の3段階を宅建士が解説

一人暮らしの部屋に、恋人が住み始めた。趣味のギターを夜に弾いている。在宅で始めた仕事のお客さんが、ときどき部屋に来る。

どれも、よくある暮らしの変化です。でも、契約書に「二人入居可」「楽器可」「SOHO可」と書いていなかったら?

先に結論を書きます。

賃貸の部屋は、契約で決めた「使い方」の範囲で使うものです。書いていないことは、許されているのではなく、決まっていないだけ。大家さんへの通知や承諾が必要なことも多く、無断で行うと契約違反になることがあります。

この記事では、国土交通省の賃貸住宅標準契約書をもとに、暮らしの中でよくある「使い方の変化」を3段階に整理し、無断で行ったときのリスクを、賃貸の実務に携わる宅建士の私がまとめます。

1. 賃貸の大原則:決めた「使い方」で使う

民法では、借りた人は、契約や物件の性質で決まった使い方に従って使わなければなりません(用法遵守義務:民法616条・594条)。

国土交通省の賃貸住宅標準契約書では、使い方がこう決められています。

「乙は、居住のみを目的として本物件を使用しなければならない。」(第3条)

つまり、住むための部屋として借りている、ということです。そのうえで、標準契約書は、暮らしの中で起きる行為を、次の3つに分けています。

賃貸の「使い方」の3段階。通知が必要:同居人を追加する、1か月以上留守にするなど。書面の承諾が必要:犬・猫などを飼う、模様替えや設備の取り付けなど。禁止:近所に迷惑な大音量でのピアノ演奏など、危険物の持ち込みなど。
段階主な例(標準契約書より)
通知が必要頭書に書いた同居人に、新しい同居人を加える(出生を除く)、1か月以上留守にする
書面の承諾が必要犬・猫などの動物を飼う、模様替えや造作、設備の取り付け など
禁止大音量でテレビやステレオを操作したり、ピアノなどを演奏したりする、危険物を持ち込む など

※実際の契約書では、特約でこれより厳しく決められていることも多いです。必ず自分の契約書で確認しましょう。

2. 二人入居・同棲:契約書の「入居者」が変わる

契約書には、入居する人の名前と人数が書かれています。標準契約書では、新しい同居人を加えるときは大家さんへの通知が必要です。ただし実務では、「入居者の追加は貸主の承諾が必要」としている契約書がほとんどです。標準契約書の解説でも、親族以外を同居人に加えるときは承諾事項とする例が示されています。

二人入居を断られる理由は、主に次のようなものです。

  • 部屋の広さ:単身向けの間取りで、二人暮らしを想定していない
  • 騒音や設備の負担:生活音、水道やゴミの量が増える
  • 契約関係:別れて契約者が出ていき、契約者でない人だけが残る、といったトラブル

無断で同居すると、入居者の申告と違う使い方になり、契約違反を問われることがあります。また、契約者以外の人に住まわせることは、場合によっては無断転貸(民法612条)と受け取られることもあります。

これから一緒に住むなら、入居前に「二人入居可」の部屋を選ぶのが確実です。住み始めてから一緒に住むことになったら、まず管理会社に相談しましょう。

3. 楽器:「楽器可」でも時間や種類にルールがある

標準契約書では、大音量でのピアノなどの演奏は禁止事項です。楽器を弾くなら、「楽器可」「楽器相談」の部屋を選ぶのが前提になります。

「楽器可」の部屋でも、

  • 演奏できる時間(例:9時〜20時)
  • 楽器の種類(ピアノ・管楽器・打楽器は不可、など)
  • 防音室の設置の可否

などのルールがついていることがほとんどです。電子ピアノやヘッドホンを使う演奏でも、打鍵の振動が下の階に響くことがあります。契約書と特約で、時間と種類を必ず確認しましょう。

4. SOHO・在宅ワーク:「事務所」としての使用は別

パソコンで仕事をする在宅ワークは、ふつうは「居住」の範囲で問題ありません。

気をつけたいのは、次のような使い方です。

  • お客さんが頻繁に出入りする(サロン、教室、相談業務など)
  • 看板や表札に会社名を出す
  • 法人の登記をする
  • 在庫や事業用の荷物を置く、事業ごみを出す

これらは「居住のみ」という使い方を超えると判断されやすいものです。標準契約書の解説でも、居住以外の使用は特約で決めるものとされています。事業として使うなら、「SOHO可」の部屋を選び、どこまでできるかを特約で確認しましょう。登記できるかどうかは、物件ごとに違います。

5. 無断で行ったらどうなる?

  • 管理会社から注意され、改善を求められる
  • 改善しなければ、契約の解除を求められることがある
  • 退去時に、使い方による傷みの補修費用を請求される

賃貸借の解除は、大家さんと借主の信頼関係が壊れたといえるかで判断されるのが原則です。最高裁も、無断転貸であっても、背信行為と認めるに足りない特別な事情があれば解除できない、という考え方をとっています。ただ、それは「無断でもよい」という意味ではありません。トラブルになってから争うより、先に相談するほうが、ずっと楽です。

6. まとめ

  • 賃貸の部屋は「居住のみ」が原則。書いていないことは、許されているのではない
  • 標準契約書では「通知が必要」「書面の承諾が必要」「禁止」の3段階
  • 二人入居は、入居前に「二人入居可」の部屋を選ぶのが確実
  • 楽器は「楽器可」でも、時間と種類のルールを確認する
  • 事業としての使用は「SOHO可」の部屋で、特約の範囲を確かめる

ジカビーの一言

暮らしは変わっていくものです。恋人と住むことになる、趣味が増える、働き方が変わる。そのたびに引っ越すのは大変ですが、相談すれば認めてもらえることも少なくありません。

大事なのは、黙って始めないこと。「こういう使い方をしたいのですが」と一言伝えるだけで、トラブルの多くは防げます。

賃貸の契約やお金のことで迷ったら、LINEでご相談ください。

参考:民法594条・612条・616条、国土交通省「賃貸住宅標準契約書」(平成30年3月版)第3条・別表第1〜第3と解説コメント、最高裁 平成21年11月27日判決。

連載「借りる前に読む、賃貸の話」第2章(契約書と重要事項説明)#16。連載の目次を見る

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