不動産トラブル回避帳 賃貸編

【賃貸のエアコン・給湯器が壊れたら】修理代は誰が払う? 直してくれないときの対処法|宅建士が解説

真夏の夜にエアコンが止まった。真冬の朝、シャワーからお湯が出ない。

賃貸で暮らしていると、いつかは設備の故障に出会います。そのとき頭に浮かぶのは、

「修理代、自分で払うの?」
「管理会社が全然動いてくれなかったら?」

という2つの心配ではないでしょうか。

先に結論を書きます。

部屋に備え付けの設備が壊れたら、修理は原則として大家さんの負担です。借主がまずやるべきことは、すぐに管理会社へ知らせること。知らせたのに直してくれないときは、借主が自分で修理して、その費用を大家さんに請求できます。

この記事では、故障したときの手順と、2020年4月の民法改正で書き加えられた「借主が自分で直せるルール」を、賃貸の実務に携わる宅建士の私がまとめます。第3章「入居中のトラブル」のはじまりの記事です。

1. 修理は原則として大家さんの負担

民法606条には、こう書かれています。

「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。」

つまり、

  • ふつうに使っていて壊れた(経年劣化・寿命など) → 大家さんが直す
  • 借主の不注意で壊した(物をぶつけた、手入れを怠ったなど) → 借主の負担

というのが基本です。東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」でも、貸主には修繕義務があり、借主の故意・過失による修繕は借主負担と説明されています。

設備が壊れたときの手順。1すぐ管理会社に連絡(民法615条の通知義務)、2貸主が修理(606条の修繕義務)、3直してくれないときは借主が修理して費用を請求できる(607条の2・608条)、4使えない期間は家賃が減る(611条)。

2. 壊れたら、まずやること

故障かどうか、簡単に確かめる

本当に故障か、先に確かめておくと話が早く進みます。

  • エアコン:リモコンの電池、ブレーカー、フィルターの目詰まり
  • 給湯器:ガスの元栓、給湯器の電源、ガスメーターの安全装置(地震や長時間の使用で止まることがあります)

すぐ管理会社に連絡する

民法615条では、借りている部屋に修理が必要になったとき、借主は遅滞なく大家さんに知らせなければならないとされています(大家さんがすでに知っているときは除きます)。

黙って我慢していると、そのあいだに広がった損害(水漏れが床に広がった、など)について、責任を問われることがあります。

連絡するときは、次のことを伝えましょう。

  1. いつから、どんな症状か(「昨夜から冷房が効かない。風は出る」など)
  2. 設備のメーカーと型番(本体のシールに書いてあります)
  3. 写真や動画(エラー表示、水漏れの様子)
  4. 自分で確かめたこと(電池・ブレーカーは確認済み、など)

電話のあとに、同じ内容をメールでも送っておくと記録が残ります。管理会社の連絡先は、東京都の紛争防止条例(東京ルール)で、契約前に宅建業者が説明することになっています。入居時の書類に書かれているはずです。

やってはいけないこと

管理会社に知らせる前に、自分で業者を呼んで直してしまうのは避けましょう。大家さんが手配した業者なら無料で直せたのに、費用を払ってもらえない、ということになりかねません。

3. 直してくれないときは? 借主が自分で修理できる

2020年4月に施行された改正民法で、借主が自分で修理できる場面がはっきり書かれました(民法607条の2)。次のどちらかに当たれば、借主が修理できます。

場面具体的には
知らせたのに直さない借主が修理が必要だと知らせた(または大家さんが知った)のに、相当の期間がたっても修理されない
急いで直す必要がある急迫の事情がある(真冬にお湯が出ない、水漏れが止まらない など)

そして、借主が払った修理代は、大家さんに「直ちにその償還を請求することができる」とされています(民法608条1項)。

自分で修理するときの注意

  • 「いつまでに直してもらえないなら、こちらで修理します」と、先に書面やメールで伝える
  • 見積書・領収書・修理報告書を残す
  • 同等の機能に戻す修理にとどめる(グレードアップした分は請求できないことがあります)

「相当の期間」が何日かは、法律に決まっていません。設備の種類や季節、部品の取り寄せの事情などで変わります。迷ったら、修理の前にもう一度、管理会社に期限を区切って連絡しましょう。

4. 使えなかった間の家賃は減る

民法611条では、借主に落ち度がないのに部屋の一部が使えなくなったときは、使えない割合に応じて家賃が「減額される」と書かれています。改正前は「請求できる」でしたが、今は請求しなくても当然に減る、という書き方です。

ただし、何円減るかは法律で決まっていません。業界団体(日本賃貸住宅管理協会)が示した目安があり、たとえばエアコンが使えない場合は「月5,000円、ただし最初の3日間は差し引かない」といった数字が紹介されています。これは法的な拘束力のない参考の目安です。実際には、管理会社と話し合って決めることになります。

使えなかった期間を証明できるよう、故障した日・連絡した日・直った日をメモしておきましょう。

5. 借主の負担になるケース

  • 借主の不注意で壊した:落とした、ぶつけた、説明書と違う使い方をした
  • 手入れを怠って壊した:フィルター掃除をまったくせず故障した、など
  • 特約で借主負担とされている小修繕:電球、パッキン、ヒューズなど
  • 「残置物」の設備:前の入居者が置いていったエアコンなど

電球などの小修繕を借主負担とする特約について、東京都のガイドラインは「借主に自己負担で修繕できる権利を与えるもの」と説明しています。借主に修理の義務を負わせるものではない、という考え方です。

残置物の設備は、大家さんが直す対象にならないことがあり、少しややこしい話です。

6. まとめ

  • 備え付けの設備の修理は、原則として大家さんの負担(民法606条)
  • 壊れたら、すぐ管理会社に知らせる。黙っていると責任を問われることも(民法615条)
  • 知らせたのに直さない、または急ぐ事情があるときは、借主が修理して費用を請求できる(民法607条の2・608条)
  • 使えない間の家賃は、割合に応じて減る(民法611条)
  • 借主の不注意、特約の小修繕、残置物は、借主負担になることがある

ジカビーの一言

設備の故障は、誰のせいでもないことがほとんどです。だからこそ、遠慮せずにすぐ知らせてください。

管理会社にとっても、早く知らせてもらえるほうが、修理の段取りがつけやすく、被害も小さく済みます。「こんなことで連絡していいのかな」と迷う必要はありません。写真を1枚撮って、メールを1通。それがいちばんの近道です。

賃貸の契約やお金のことで迷ったら、LINEでご相談ください。

参考:民法606条・607条の2・608条・611条・615条(e-Gov法令検索)、東京都「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」第4版(2022年12月)。家賃減額の目安は日本賃貸住宅管理協会の資料として紹介されているものです。

連載「借りる前に読む、賃貸の話」第3章(入居中のトラブル)#18。連載の目次を見る

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