不動産トラブル回避帳 賃貸編

【賃貸の残置物とは】エアコンが「残置物」だと修理は自己負担? 設備との違いと契約前の確かめ方|宅建士が解説

部屋にエアコンが付いていて、ラッキー。そう思って住み始めたのに、壊れて管理会社に連絡したら、

「そのエアコンは残置物なので、修理はご自身でお願いします」

と言われた。賃貸の相談で、ときどき聞く話です。

先に結論を書きます。

部屋に付いている物には、大家さんが用意した「設備」と、前の入居者が置いていった「残置物」があります。設備なら、壊れたときは原則として大家さんが直します。でも残置物は、使ってよいけれど、壊れても大家さんが直さないことが多いもの。どちらなのかは、契約書と重要事項説明書で確かめられます。

この記事では、残置物と設備の違い、書類での見分け方、契約前に聞いておきたいことを、賃貸の実務に携わる宅建士の私がまとめます。

1. 「残置物」とは

賃貸の部屋探しでいう「残置物」は、前の入居者が退去するときに置いていき、大家さんがそのまま残した物のことです。よくあるのは、

  • エアコン
  • 照明器具
  • 温水洗浄便座(ウォシュレット)
  • カーテンレールやカーテン
  • 食器洗い乾燥機
  • ベランダの物置

などです。

なお、「残置物」は法律で定義された言葉ではなく、不動産業界でふつうに使われている言い方です。国交省と法務省が2021年に公表した「残置物の処理等に関するモデル契約条項」は、借主が亡くなったあとに残る家財の扱いを決めるためのもので、この記事の「残置物」とは別の話です。

2. 「設備」と「残置物」の違い

設備と残置物の違い。設備は大家さんが用意したもので、壊れたら原則として大家さんが修理する。残置物は前の入居者が置いていったもので、壊れても大家さんは直さないことが多い。
項目設備残置物
誰の物?大家さんが用意した物前の入居者が置いていった物
書類での書かれ方設備欄に「有」「残置物」「サービス品」「前入居者の残置」など
壊れたら原則として大家さんが修理(民法606条)借主の負担になることが多い
撤去したいとき勝手に外せない大家さんに相談(撤去費用の負担も確認)
退去するときそのまま置いていく残してよいか確認が必要なことも

東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」でも、前の居住者が置いていったエアコンなど、契約書に付帯設備として書かれていないものは、貸主負担にならないケースもあると書かれています。

設備が壊れたときの一般的な流れは、エアコン・給湯器が壊れたときの記事で解説しています。

3. 書類のどこで見分ける?

重要事項説明書の設備欄

賃貸の重要事項説明では、台所・浴室・トイレなどの設備の整備状況を説明することになっています。設備の一覧に「エアコン:有」と書かれていれば、設備として扱われていると考えられます。

契約書・特約欄

残置物がある場合は、特約欄や備考欄に、

  • 「エアコン(1台)は前入居者の残置物であり、故障時の修理・交換は借主の負担とする」
  • 「残置物については貸主は修繕義務を負わない」

などと書かれていることが多いです。

物件資料

募集図面に「エアコン付」と書いてあっても、それが設備か残置物かまでは分からないことがあります。図面ではなく、契約書と重要事項説明書で確かめるのが確実です。

4. 契約前に聞いておきたい4つのこと

  1. 「このエアコン(照明・便座)は設備ですか、残置物ですか」
  2. 「残置物なら、壊れたときの修理や交換は誰の負担ですか」
  3. 「使わないなら、撤去してもらえますか。費用はどちらの負担ですか」
  4. 「退去するとき、残置物は置いていってよいですか」

答えは、口頭ではなく、重要事項説明書や契約書の特約に書いてもらうと安心です。重要事項説明で確かめたいことは、重説で聞き流してはいけない3か所にまとめています。

5. 交渉できることもある

残置物の扱いは、大家さんとの話し合いで変えられることがあります。

  • 残置物を「設備」として扱ってもらう:古いエアコンでも、設備にしてもらえれば、壊れたときに大家さんが直してくれる
  • 契約前に撤去してもらう:自分で新しいものを付けたい場合
  • 申込みのときに条件として伝える:空室が長い部屋などでは、応じてもらえることもある

申込みの前に交渉するのがいちばん効果的です。交渉の考え方は、初期費用の交渉の記事も参考にしてください。

6. 残置物のエアコンが壊れたら

残置物の扱いになっているエアコンが壊れたら、

  1. まず管理会社に連絡する:残置物でも、大家さんの判断で直してもらえることがある
  2. 自分で直すなら、取り外し・処分も含めて相談する:勝手に外すと、退去時に「元に戻して」と言われることも
  3. 業者選びに注意する:国民生活センターには、エアコン修理のトラブル相談が増えていて、2025年度は1,251件でした(賃貸に限らない数字です)。ネット広告の料金だけで決めず、見積もりを確かめましょう

7. まとめ

  • 残置物は、前の入居者が置いていった物。法律の用語ではなく業界の言い方
  • 設備なら大家さんが修理。残置物は、壊れても借主の負担になることが多い
  • どちらかは、重要事項説明書の設備欄と、契約書の特約で確かめる
  • 契約前に「設備か残置物か」「壊れたら誰が直すか」を聞き、書面に残す
  • 残置物を設備として扱ってもらう、撤去してもらう、といった交渉もできる

ジカビーの一言

「付いていてラッキー」と思っていたエアコンが、実は自分の負担だった。これは、契約の前に一言聞いておくだけで防げるトラブルです。

内見のときに部屋の設備を見たら、「これは設備ですか」と聞く。それだけで、住み始めてからの安心が変わります。

賃貸の契約やお金のことで迷ったら、LINEでご相談ください。

参考:民法606条、東京都「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」第4版(2022年12月)、国土交通省「賃貸住宅標準契約書」解説コメント、国土交通省・法務省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」(2021年6月7日)、国民生活センター「エアコン修理のトラブル」(2026年6月3日)。

連載「借りる前に読む、賃貸の話」第3章(入居中のトラブル)#22。連載の目次を見る

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