冬の朝、窓ガラスがびっしょり濡れている。気づけば、窓枠のゴムパッキンや壁紙の隅に黒いポツポツが……。
「これ、退去のときに全部請求されるの?」
結露とカビは、賃貸の退去費用でよく問題になるテーマです。
先に結論を書きます。
結露は、建物の構造が原因で起きることが多く、それ自体は原則として借主の責任ではありません。ただし、結露が出ているのに大家さんに知らせもせず、拭き取りなどの手入れもせずに放置して、カビやシミを広げた分は、借主の負担になります。分かれ目は「放置したか」と「知らせたか」です。
この記事では、国土交通省と東京都のガイドラインをもとに、負担の考え方と、今日からできる対策を、賃貸の実務に携わる宅建士の私がまとめます。
1. ガイドラインでの結露・カビの扱い

国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、次のように整理されています。
| ケース | 負担 |
|---|---|
| 日照や建物の構造の欠陥による傷み | 原則として借主の責任ではない(借主が通知義務を怠った場合を除く) |
| 結露を放置したことで広がったカビ・シミ | 借主の負担(借主のその後の手入れが悪く、発生・拡大したと考えられるもの) |
ガイドラインの別表では、借主負担となる例を、こう説明しています。
「賃借人が結露を放置したことで拡大したカビ、シミ(賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合)」
東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」でも、「結露は建物の構造上の問題であることが多い」としたうえで、借主が貸主に通知もせず、拭き取るなどの手入れを怠った場合は、借主負担の例に挙げています。
つまり、「通知もせず」かつ「手入れも怠った」ときに、借主の負担になる、という考え方です。
2. 借主に求められる2つのこと
手入れ(善管注意義務)
借主は、借りた部屋を「善良な管理者の注意」をもって使う義務があります。結露については、
- 窓や壁の水滴を、こまめに拭き取る
- 換気をする(換気扇を回す、窓を少し開ける)
- 家具を壁から少し離して置く
- 加湿器を使いすぎない、部屋干しのときは換気する
といった、ふつうの手入れをしておくことが求められます。
通知(民法615条)
民法615条では、修理が必要なときは、借主は遅滞なく大家さんに知らせなければならないとされています。
拭いても拭いても結露がひどい、カビが広がってきた、というときは、管理会社に知らせましょう。建物の断熱や換気の問題かもしれません。知らせておけば、大家さんの側で対策を検討できますし、退去のときに「放置した」と言われる心配も減ります。
3. 管理会社への知らせ方
○○号室の△△です。冬になってから、北側の寝室の窓と壁に、毎朝ひどい結露が出ます。毎日拭き取り、換気もしていますが、壁紙の隅に黒いカビが出てきました。写真を添付します。建物の状態を一度見ていただけないでしょうか。
ポイントは、
- いつから、どこに、どのくらい
- 自分でしている手入れ(拭き取り・換気)
- 写真(日付が残るもの)
メールで送っておけば、「通知した」という記録がそのまま残ります。
4. 退去時に請求されたら
結露によるカビで退去費用を請求されたら、次のことを確かめましょう。
- 建物の構造が原因ではないか:北向き、1階、断熱の弱い窓など
- 通知していたか:管理会社へのメールや連絡の記録
- 入居時からあったカビではないか:入居日に撮った写真と比べる
- 経過年数を考えているか:壁紙(クロス)は、6年で残存価値1円となるように負担割合を計算するのがガイドラインの考え方です
借主の負担になる場合でも、壁紙の張り替え費用の全額を払う必要があるとは限りません。何年住んだかで、負担の割合は小さくなります。経過年数の考え方は、原状回復ガイドラインの記事で解説しています。
5. 部屋選びで結露しやすい部屋を見分ける
これから部屋を探す人は、内見のときに次のことを見ておくと安心です。
- 窓枠やゴムパッキンに黒い跡がないか
- 北側の部屋、押し入れ、クローゼットの奥の壁
- 1階や、日当たりの悪い部屋
- 窓がペアガラス(複層ガラス)か
- 24時間換気があるか
内見のときに気になったら、「冬に結露は出ますか」と聞いてみてください。
6. まとめ
- 建物の構造による結露は、原則として借主の責任ではない
- ただし、通知もせず、手入れも怠って広げたカビ・シミは借主負担
- ふだんは拭き取り・換気。ひどいときは、写真を添えて管理会社に知らせる
- 退去時は、構造の原因・通知の記録・入居時の写真・経過年数を確かめる
ジカビーの一言
結露は、借主の努力だけではどうにもならないこともあります。だからこそ、「拭いている」「換気している」「知らせた」という事実を残しておくことが大切です。
メール1通で、退去のときの話し合いはずっと楽になります。カビを見つけたら、まず写真を撮って、管理会社へ。それを習慣にしておきましょう。
賃貸の契約やお金のことで迷ったら、LINEでご相談ください。
参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(平成23年8月)別表1〜3、東京都「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」第4版(2022年12月)、民法400条・615条・621条。
連載「借りる前に読む、賃貸の話」第3章(入居中のトラブル)#21。連載の目次を見る