不動産トラブル回避帳 賃貸編

【家賃を滞納しそうなとき】最初にやるべきこと|連絡の仕方・住居確保給付金・区の相談窓口を宅建士が解説

仕事が減った。急な出費が重なった。今月の家賃、払えるだろうか……。

誰にでも起こりうることです。そして、こういうときほど、誰にも言えずにひとりで抱え込んでしまいがちです。

先に結論を書きます。

家賃が払えないかもしれないと思ったら、支払日の前に、管理会社(保証会社)へ連絡してください。そして、区の生活相談の窓口へ。条件に合えば、住居確保給付金で家賃の補助を受けられます。いちばんしてはいけないのは、連絡を絶って放置することです。

この記事では、滞納するとどうなるのか、最初にやるべきこと、使える制度と窓口を、賃貸の実務に携わる宅建士の私がまとめます。第3章「入居中のトラブル」のしめくくりの記事です。

1. 最初にやるべき4つのこと

家賃が払えないかもと思ったときの手順。1支払日前に管理会社に連絡、2区の相談窓口へ、3住居確保給付金を申請、4連絡を絶たない。

① 支払日の前に連絡する

管理会社(保証会社がついている場合は保証会社にも)に、

  • 払えなくなりそうな理由(失業、収入減、病気など)
  • いつ、いくらなら払えそうか

を伝えましょう。事情を説明し、払える見込みを示せば、支払日を少し待ってもらう、分割にしてもらう、といった相談に応じてもらえることもあります。

支払日を過ぎてから、督促の電話に出ないのがいちばんよくありません。

② 区の相談窓口へ

各区には、生活や仕事の悩みを相談できる窓口(自立相談支援機関)があります。家賃のことだけでなく、仕事探し、ほかの支払い、使える制度をまとめて相談できます。

③ 住居確保給付金を申請する

条件に合えば、家賃の補助を受けられます(くわしくは次の章)。

④ 連絡を絶たない

連絡が取れなくなると、大家さんや保証会社は「払う気がない」と受け取ります。払えない月があっても、連絡を続けることが、住まいを守ることにつながります。

2. 住居確保給付金とは

離職や収入減で住まいを失うおそれがある人に、家賃相当額を自治体が支給する制度です。お金は自治体から大家さん(管理会社)へ直接振り込まれます。

項目内容
対象離職・廃業から2年以内、またはそれと同程度に収入が減った人
期間原則3か月。延長は2回まで、最長9か月
条件ハローワークへの登録と求職活動など
上限額(特別区の例)単身 月53,700円、2人世帯 月64,000円、3〜5人世帯 月69,800円

収入や預貯金の基準もあります。たとえば大田区の案内では、単身世帯の収入基準額は月92,000円、預貯金などは55.2万円以下とされています。くわしい条件は、お住まいの区の窓口で確かめてください。

3. 大田区・品川区の相談窓口

区窓口電話
大田区生活再建・就労サポートセンター JOBOTA(大森北1-11-1 柳原大森ビル6階、予約制)03-6423-0251
品川区品川区暮らし・しごと応援センター(第二庁舎3階)03-5742-9117

※受付時間や場所は変わることがあります。電話で予約・確認してから訪ねてください。

ほかの区にお住まいの人は、「○○区 住居確保給付金」「○○区 自立相談支援」で検索すると窓口が見つかります。

4. 滞納すると、どうなる?

すぐに追い出されるわけではない

家賃を払うのは、借主のいちばん大事な義務です。ただ、1回払えなかったからといって、すぐに契約を解除されるわけではありません。

最高裁は、賃貸借の解除について、大家さんと借主の信頼関係が壊れたといえるかで判断する考え方をとっています。たとえば、

  • 借主が台風で壊れた屋根を自費で直していた事情などから、数か月分の延滞があっても解除は信義則に反するとした判決(最高裁 昭和39年7月28日)
  • 約11年間滞納のなかった人が2か月分を滞納した事案で、無催告での解除を認めなかった判決(最高裁 昭和44年5月30日)

があります。一方で、信頼関係を壊すような事情があれば、催告なしに解除できるとした判決もあります(最高裁 昭和47年11月16日)。

「3か月までは大丈夫」と言われることもありますが、法律に決まった月数があるわけではありません。事情によっては、もっと短い期間で解除が認められることもあります。

保証会社がついている場合

最近の賃貸は、多くが家賃保証会社を利用しています。滞納すると、保証会社が大家さんに家賃を立て替え、借主は保証会社から請求を受けることになります。立て替えてもらったからといって、払わなくてよくなるわけではありません。保証会社の仕組みは、保証会社の審査の記事で解説しています。

「追い出し条項」は無効とされた

ある保証会社の契約書には、家賃を2か月以上滞納し、連絡が取れないなどの条件がそろえば、部屋の明渡しがあったものとみなす、という条項がありました。最高裁は令和4年12月12日、この条項などを消費者契約法10条にあたり無効として、使用の差止めを認めました。

借主の荷物を勝手に運び出したり、鍵を替えて締め出したりすることは、許されないということです。

5. まとめ

  • 払えないかもと思ったら、支払日の前に管理会社・保証会社に連絡する
  • 区の生活相談の窓口へ。住居確保給付金で家賃の補助を受けられることがある
  • 1回の滞納ですぐ解除されるわけではないが、「何か月まで大丈夫」という決まりもない
  • 保証会社が立て替えても、借主の支払い義務はなくならない
  • いちばんしてはいけないのは、連絡を絶つこと

ジカビーの一言

お金の悩みは、人に話しにくいものです。でも、大家さんや管理会社がいちばん困るのは、「払えないこと」よりも「連絡が取れないこと」です。

早めに事情を伝えて、払える見込みを話す。区の窓口に相談する。それだけで、選べる道はぐっと増えます。ひとりで抱え込まないでください。

これで「借りる前に読む、賃貸の話」第3章、入居中のトラブルの話はひと区切りです。次の章では、更新と解約、住み続けるときと出ていくときの話を扱います。

賃貸の契約やお金のことで迷ったら、LINEでご相談ください。

参考:最高裁 昭和39年7月28日判決、最高裁 昭和44年5月30日判決(昭和44(オ)119)、最高裁 昭和47年11月16日判決(昭和45(オ)942)、最高裁 令和4年12月12日判決(令和3(受)987)、厚生労働省「住居確保給付金」、大田区「住居確保給付金」、品川区住宅課資料(令和7年4月)。

連載「借りる前に読む、賃貸の話」第3章(入居中のトラブル)#23。連載の目次を見る

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