不動産トラブル回避帳 賃貸編

【退去立会いの前日にやること】チェックリストと当日の注意点|その場でサインしないための準備を宅建士が解説

引っ越しの荷物はほとんど片づいた。明日は、いよいよ退去の立会い。

「何を見られるんだろう」「その場で高い金額を言われたらどうしよう」

退去立会いの前の晩は、不安になるものです。

先に結論を書きます。

退去立会いで大切なのは、当日の交渉よりも前日の準備です。契約書と特約、入居時の写真、国交省のガイドラインをそろえ、部屋を整えておく。そして当日は、その場で金額にサインせず、明細を書面で受け取ってから判断する。それだけで、立会いはずっと落ち着いて進められます。

国民生活センターに寄せられる原状回復の相談は、2025年度に14,711件ありました。この記事では、そうしたトラブルを防ぐための前日のチェックリストを、賃貸の実務に携わる宅建士の私がまとめます。連載「借りる前に読む、賃貸の話」の最終回です。

1. 前日のチェックリスト

退去立会いの前日にやること。書類(契約書と特約・入居時の写真・ガイドラインの負担表・傷の一覧)、部屋(掃除・荷物とごみを残さない・傷を自分で補修しない・鍵の本数)、当日(スマホ・メモ・その場でサインしない・明細を書面で求める)。

2. 書類をそろえる

契約書と特約を読み返す

特に見ておきたいのは、次の3つです。

  • クリーニング特約:「退去時のクリーニング費用は借主負担」など。金額が書かれているか
  • 原状回復の負担の定め:通常損耗まで借主負担とする特約がないか
  • 敷金の精算方法:いつ、どう返されるか

特約が有効かどうかの考え方は、クリーニング特約の記事と特約の有効・無効の記事で解説しています。

入居時の写真とチェック表を探す

入居したときに撮った写真や、管理会社に出した入居時チェック表の控えがあれば、すぐ見られるようにしておきます。「この傷は入居前からあった」と示す、いちばんの材料です。入居時の写真の撮り方は、入居日の写真記録の記事にまとめています。

国交省ガイドラインの負担表

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には、どんな傷みを誰が負担するか、壁紙は何年で価値がなくなるか(6年で残存価値1円)といった表があります。スマートフォンですぐ開けるようにしておきましょう。要点は、原状回復ガイドラインの記事にまとめています。

今の部屋の傷を一覧にする

前日のうちに、部屋をひとまわりして、傷や汚れを写真に撮っておきます。日付が残るので、立会いのあとに「傷が増えている」と言われたときの比較にもなります。

3. 部屋を整える

  • 掃除をしておく:ふつうの掃除で十分です。汚れがひどいと、通常の清掃を超える費用を求められることがあります
  • 荷物やごみを残さない:残した物の処分費用を請求されることがあります
  • 傷を自分で補修しない:市販の補修材で直すと、かえって補修範囲が広がり、費用が上がることがあります
  • 鍵の本数を確かめる:入居時に受け取った本数(スペアキーも含む)をそろえる
  • 電気・ガス・水道の停止、郵便の転送:手続きが済んでいるか確かめる

4. 当日の持ち物

  • スマートフォン:写真・動画の撮影、必要なら録音
  • メモと筆記用具:指摘された箇所と、担当者の説明を書き留める
  • 契約書とチェック表の控え
  • 鍵

立会いでは、担当者が部屋を見て、傷や汚れを確認していきます。指摘された箇所は、その場で一緒に写真を撮り、どんな理由で、誰の負担と考えているのかを聞いてメモしましょう。

5. その場で金額にサインしない

立会いの最後に、「確認書」や「精算書」へのサインを求められることがあります。部屋の状況を確認したことと、金額に同意することは別です。

金額まで書かれた書類には、その場でサインしなくてかまいません。こう伝えましょう。

部屋の状況は確認しました。金額については、明細を書面でいただいてから、ガイドラインと照らして回答します。

国民生活センターも、退去時はできる限り貸主側と一緒に現状を確認し、納得できない請求は明細の説明を求めるよう勧めています。

明細が届いたら、「どの傷に」「いくら」「何年分の負担として」計算されているかを確かめます。請求額が高すぎると感じたときの考え方と交渉の手順は、退去費用の記事(前編)と後編で詳しく解説しています。

6. 立会いがない、と言われたら

最近は、立会いをせず、鍵を返すだけで退去する方式もあります。その場合は、自分で部屋全体の写真と動画を撮り、鍵の返却日と一緒に管理会社へメールで送っておきましょう。立会いの代わりの記録になります。

7. まとめ

  • 退去立会いは、前日の準備で結果が変わる
  • 契約書と特約、入居時の写真、ガイドラインの負担表をそろえる
  • 前日に部屋の傷を一覧にして、写真に撮る
  • 掃除はふつうに。傷は自分で補修しない。荷物とごみは残さない
  • 当日は一緒に写真を撮り、説明をメモする
  • 金額にはその場でサインせず、明細を書面で受け取ってから判断する

ジカビーの一言

退去立会いは、借主と貸主が、その部屋で過ごした時間を一緒に確かめる場です。準備をしておけば、こわがる必要はありません。

これで「借りる前に読む、賃貸の話」は全30回、ひと区切りです。お金と特約、契約書と重要事項説明、住んでからのトラブル、更新と解約、そして退去。部屋を借りる前から出ていくまでを、ひととおりたどってきました。

部屋を借りるのは、暮らしをつくることです。知っていれば防げるトラブルを、少しでも減らせたらうれしいです。困ったときは、連載の目次からいつでも読み返してください。

賃貸の契約やお金のことで迷ったら、LINEでご相談ください。

参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(平成23年8月)、国民生活センター「賃貸住宅の原状回復トラブル」(2026年7月31日更新)、国民生活センター「賃貸住宅退去時トラブルの対処法-入居時からできる対策-」(2025年2月21日)。

連載「借りる前に読む、賃貸の話」第4章(更新と解約)#30。連載の目次を見る

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