
旗の台の駅で降りると、まず商店街のにぎわいが耳に届きます。
店先の話し声、自転車のブレーキ、踏切の鐘。日によって聞こえるものは違いますが、町が暮らしている音であることに変わりはありません。
ところが、そこから五分も歩くと、急に音が消えます。坂をひとつ上っただけなのに、誰かが町のボリュームをそっと絞ったような静けさです。

池上線と大井町線が交わる、小さな乗換駅です。北には病院の白い棟があり、東には地名の生まれた神社があり、南には西小山から大井町へと抜ける三間通りが横たわっています。同じ「旗の台」という名前で呼ばれているのに、丁目ごとに、まるで性格が違うのです。
人間でいえば、六人きょうだいのようなものでしょうか。顔はどこか似ているのに、話してみると一人ひとりまるで違います。
正直に言えば、夜に遊びに来る町ではありません。賑やかな夜を求める人は、五反田や大井町へ出かけていきます。けれど旗の台は、そこから帰ってくる町として、なかなかよくできているのです。
その六人きょうだいに、一人ずつ会いに行きました。帰ってくるなら誰の家がいいか。寄り道するなら誰のところか。元料理人で宅建士の私、ジカビーがお届けする「旗の台の解剖図」です。
旗の台 早わかり
| 所在地 | 東京都品川区旗の台1〜6丁目(4・5丁目の坂を上り、環七を越えると大田区) |
|---|---|
| 駅 | 旗の台駅(東急池上線・大井町線) |
| 乗り換えなしで行ける駅 | 池上線:五反田・蒲田/大井町線:大井町・自由が丘・二子玉川 |
| 家賃の目安 | ワンルーム 約8.8万円/1K 約9.6万円/1LDK 約15.1万円/2LDK 約19.7万円(アットホーム掲載物件の平均、2026年10月時点) |
| 地形 | 駅のまわりは低地。多くの丁目で、駅から離れるほど坂を上る |
| 暮らし方 | 遊ぶのは五反田・大井町、帰ってくるのは旗の台 |
| 向く人 | 個人店でひとりの食事を楽しみたい人/坂の上の静けさがほしい人/2路線を使い分けたい人 |
旗の台は住みやすい? 歩いてみた答え
先に答えを言ってしまうと、旗の台は「帰ってくる町」として、かなり住みやすい町です。
池上線と大井町線の2路線が使えて、五反田にも大井町にも、自由が丘にも蒲田にも乗り換えなしで出られます。駅前には商店街があって、ひとりで入れる個人店が多い。坂をひとつ上れば、さっきまでの賑わいが嘘のように静かになります。
ただし、合わない人もいます。夜に遊ぶ場所は、町の中にはほとんどありません。駅から離れるほど坂を上る丁目が多く、高低差は10mを超えるところもあります。大きな病院の近くでは、救急車のサイレンが日常の音です。
そして、どの丁目に住むかで暮らしはずいぶん変わります。六人きょうだいの、だれの家に帰るか。ざっくり比べると、こうなります。
| 丁目 | ひとことで言うと | 向く人 |
|---|---|---|
| 1丁目 | 病院と学校と、川の上の道 | 大きな病院の近くに住みたい人 |
| 2丁目 | 丘がひとつ、町をふたつに分ける | 駅前の便利さと、丘の上の静けさを選びたい人 |
| 3丁目 | 「旗の台」の名が生まれた場所 | 神社や緑道、小さな個人店が好きな人 |
| 4丁目 | 百年続く米屋と、湯気の上がる坂 | 昔からの町の暮らしに混ざりたい人 |
| 5丁目 | 坂の下の商店街と、坂の上の静けさ | 買い物の便利さも静けさもほしい人 |
| 6丁目 | 中原街道の向こう、静かに帰るための町 | 駅へは下り坂で帰りたい、静かな住宅地がいい人 |
丁目ごとの坂や買い物、向く人・向かない人は、このあとの「旗の台1〜6丁目の解剖図」で一人ずつ紹介しています。
旗の台ってどんな街?
池上線と大井町線、2路線が交わる駅
池上線に乗れば五反田と蒲田へ、大井町線に乗れば大井町、自由が丘、二子玉川へ。どちらも乗り換えなしで行けます。
夜に遊ぶ場所を探すなら、池上線で五反田へ、大井町線で大井町へ出ればいいのです。旗の台は、そこから帰ってくる町です。
夜、五反田や大井町から帰ってきて旗の台のホームに降り立つと、思わず上を見てしまいます。
頭の上には、木目の天井。そこから、暖色の光がやわらかくこぼれてきます。駅というのは、どこも鉄とコンクリートでできているものだと思っていましたが、ここは違いました。2019年、東京の多摩で育った木を使って、ホームの屋根が木造に建て替えられたのだそうです。

賑やかな町で一日を過ごしたあと、この木の天井の下に降りると、肩の力がふっと抜けます。帰ってくる町の玄関として、これ以上の迎え方はないのかもしれません。
目黒線に用がある日だけは、少し歩きます。6丁目から洗足駅まで、十一分ほど。一つの駅で足りないところを、自分の足で補える。この町の便利さは、そういう種類の便利さだと思います。
品川区と大田区の境目
旗の台は品川区です。ところが4丁目や5丁目の坂を上りきると環七通りに出て、その先はもう大田区になります。6丁目からなら、大田区の北千束駅にも十分ほどで歩けます。

駅名で部屋を探すと大田区の物件がまじってくるのは、そのせいです。借りるにしても買うにしても、まず住所の区を確かめておきたいところです。区が違えば、ゴミの出し方から子育ての制度まで、細かいところが違ってきます。
「旗の台」という名前の由来と歴史
旗岡八幡神社と、源氏の白旗

長元3年(1030年)というから、ずいぶん昔の話です。
平忠常の乱を鎮めに向かう源頼信が、この高台に陣を張り、八幡大神に勝利を祈りました。そのとき掲げたのが、源氏の白旗。旗のなびく岡だから「旗岡」。いまの3丁目にある旗岡八幡神社の始まりだと伝わっています。

商店街でコロッケの包みを提げているときには思いもよりませんが、この町の名前は、勇ましい武将の旗から来ているのです。
法蓮寺と荏原氏
神社の隣には、法蓮寺があります。鎌倉時代、この地の領主・荏原義宗の子が日蓮の弟子となり、朗慶上人として荏原氏の館の跡に開いた寺と伝わります。明治までは、旗岡八幡の別当寺でした。

神社とお寺が仲のいい隣人のように並んでいるのには、ちゃんとわけがあるのです。
中原街道と、三間通り
旗の台を東西に貫く中原街道は、江戸と相模の平塚を結んだ古い道です。
一方、駅の南側を、西小山から大井町へと抜けていく三間通り。その名前の由来は、拍子抜けするほど素朴です。道幅がおよそ三間(約5.4メートル)あったから。それだけなのです。

武将の白旗と、巻き尺で測ったような道幅。由来の格がまるで違う二つの名前が、同じ町で肩を並べています。私は、こういうところが好きです。
旗ヶ岡駅と東洗足駅、ふたつの駅がひとつに
昭和26年(1951年)、池上線の旗ヶ岡駅と大井町線の東洗足駅がひとつになって、旗の台駅が生まれました。

消えた「旗ヶ岡」の名前は、いまも商店会の旗に残っています。1丁目の昭和医科大学の校歌にも、斎藤茂吉の詞で歌い込まれているそうです。駅は一つになっても、町は古い名前を手放さなかったのです。
旗の台1〜6丁目の解剖図|丁目ごとの性格を比べる

駅を真ん中にして、北に1・2丁目、西に6丁目、東に3丁目、南に4・5丁目が並びます。地図の上ではひとつの町ですが、歩いてみると、六つの家を順に訪ねたような気がします。
| 丁目 | ひと言で | 町の中心にあるもの | 坂 | 住まい |
|---|---|---|---|---|
| 1丁目 | 病院と学校の町 | 昭和医科大学病院・小学校2校 | ― | 集合住宅が中心 |
| 2丁目 | 丘が分ける、食と静けさ | 駅前の個人店・坂の上の住宅街 | 約13m | ― |
| 3丁目 | 地名が生まれた場所 | 旗岡八幡神社・公園5つ | 神社の高台 | 駅寄りは共同住宅、奥は戸建て |
| 4丁目 | 老舗と銭湯の坂道 | 三間通り沿いの老舗・銭湯2軒 | 約11m | 戸建てが中心 |
| 5丁目 | ふたつの顔がほどよく混ざる | 稲荷通り・跨線橋・公園2つ | 約10m | 戸建てと共同住宅が半々 |
| 6丁目 | 静かに帰るための町 | 旗六公園・中原街道沿いの一軒 | 駅へは下り | 静かな住宅地 |
旗の台1丁目 ― 病院と学校と、川の上の道

駅から北へ歩くと、正面に白く大きな病院の棟が立ち上がってきます。通院の人、職員、学生。朝から人の流れが濃い町です。町の多くを大学と病院と二つの小学校が占めていて、住まいはその隙間を縫うように建つ集合住宅が多くなります。
はじめて歩いたときは、正直、少し無機質な町だと思いました。何度か通ううちに、その印象が変わってきました。大学の建学の精神は「至誠一貫」。まごころを尽くす、という意味だそうです。白い壁の奥に流れているものを知ると、町の見え方が変わります。
病院の北側では、立会道路が桜並木になって、ゆるやかに曲がっていきます。先の見えないカーブというのは、どうしてこうも歩きたくなるのでしょう。
→ 旗の台1丁目の解剖図|無機質な病院街に流れる、誠実という名の温かさ
旗の台2丁目 ― 丘がひとつ、町をふたつに分ける

中原街道と二本の線路に囲まれた、小さな三角形の町です。その小さな三角形の中に、ビル四階分の高低差が押し込まれています。
駅寄りの低地には、ラーメン屋、パン屋、スパイスカレーの店が並びます。線路沿いのカレー屋で、魚のカレーと豚のビンダルーのあいがけを食べました。店にはジャズが流れていて、ひとりでも間がもちました。
坂の上は、空が広い住宅街です。駅からすぐなのに、坂ひとつで生活の音が遠のいていきます。地元の人の近道は、南口改札のすぐ右手にある細い階段。遠回りして坂を歩く人は、ほとんどいません。
旗の台3丁目 ― 「旗の台」の名が生まれた場所

源氏の白旗が掲げられたという高台に、旗岡八幡神社があります。町のおよそ四分の一を、神社と学校の緑が占めています。
駅寄りには、カウンターの小さな店が集まっています。焼き鳥、日本酒、それに、ひとりで入れるイタリアン。どこも大きな声で騒ぐ店ではありません。仕事帰りにひとりで一杯やって、そのまま家へ帰るのにちょうどいい店です。イタリアンは誰かと行くもの、と思い込んでいましたが、カウンターに座ってみると、そうでもありませんでした。
立会道路は、この丁目で少し不器用になります。歩道と公園が入り組んでいて、自転車だと「おっと」とブレーキをかけることになります。けれど、その先に公園が五つ並んでいると思えば、歩きにくさも悪くありません。
旗の台4丁目 ― 百年続く米屋と、湯気の上がる坂

駅を出て三間通りを渡り、さらに南へ歩くと、道は少しずつ上り坂になります。看板の並ぶ通りを横目に坂を上りきる頃には、商店街のにぎわいが住宅地の静けさに変わっています。
大正創業の米屋のおはぎは、午前中に売り切れることがあるそうです。乾物屋から始まった惣菜屋では、二代目が昭和の煮物を炊き続けています。洋菓子店の二代目は、レジの引き出しに一枚だけ残っていた昔のロゴシールをもとに、新しいロゴをつくったといいます。どの店も、代替わりのたびに誰かが「続けよう」と決めてきた店です。
銭湯が二軒あります。新生湯と、中延記念湯。坂を上りきれば環七で、その向こうはもう大田区です。
→ 旗の台4丁目の解剖図を読む【4丁目は下書き中:11/1より前に公開】
旗の台5丁目 ― 坂の下の商店街と、坂の上の静けさ

池上線が長原へ向かう、そのちょうど中ほどにある町です。線路際の稲荷通りを入ると、路地の奥に朱色の鳥居が見えます。
線路の向こうへ渡るには、二本の小さな橋があります。踏切の遮断機を待たずに渡れる、知る人ぞ知る近道です。
坂を上ると、戸建てと共同住宅が半分ずつの住宅街になります。坂の下のにぎわいと、坂の上の静けさ。その二つが張り合わずに並んでいます。どちらかに決めなくていい町というのは、案外少ないものです。
旗の台6丁目 ― 中原街道の向こう、静かに帰るための町

中原街道の信号待ちで、いつも一瞬、立ち止まってしまいます。背中には車の音。目の前の路地には、妙な静けさ。その静けさの側が、6丁目です。
駅へは下り坂で七分。帰りは、ゆるい上りになります。商店街はありませんが、南千束交差点のスーパーで日々の買い物はたいてい足ります。にぎわいがほしい日は、自転車で大岡山へ、長原へ、西小山へ出かければいいのです。
夜は、街灯だけが道を照らしています。賑わいを取りに行く町ではありません。一日の終わりに、静かに帰ってくる町です。
歩いて巡る、旗の台の神社・公園・寄り道スポット
旗の台には、わざわざ遠くから人を呼ぶような観光地はありません。そのかわり、六つの丁目のあちこちに、ちょっとした寄り道が転がっています。歩けば歩くほど見つかる、というのは、こういう町のことを言うのだと思います。

神社と寺
旗岡八幡神社(3丁目)
地名の生まれた神社です。鳥居の手前に小さな遊び場「旗岡児童遊園」があって、由緒ある境内のすぐそばから子どもの声が聞こえてきます。神様も、きっと退屈しません。
法蓮寺(3丁目)
神社の隣のお寺です。秋には御会式の万灯が出ますが、池上のような人波はありません。町内の人たちが静かに見送る、こぢんまりとしたお祭りです。
旗の台伏見稲荷神社(5丁目)
稲荷通りという名前の由来になった、お稲荷さんです。商店街からひと筋入っただけで、すっと空気が変わります。
立会道路と公園

立会道路(1丁目・3丁目)
暗渠になった立会川の上の道です。1丁目では桜並木のカーブになり、3丁目では公園の入り組む不器用な緑道になります。同じ川の記憶なのに、丁目が変わると顔が変わる。きょうだいでも性格が違うのと、同じことなのでしょう。
3丁目の公園
池上線のすぐ横で、木のジャングルジムに登って電車を見送る「旗の台北公園」。カエルの銅像が迎える緑道。花壇の道の途中にある「旗の台なか公園」。防球ネットのある、見通しのいい「旗の台広場公園」。
5丁目の公園
すり鉢状にくぼんだ広場の上に、吊り橋を渡した「旗の台公園」。カナリヤ坂の斜面に、段々畑のように三段の遊び場が重なる「旗の台南公園」。坂の町は、公園まで起伏でできています。

2丁目・6丁目の小さな公園
線路沿いの「立会川児童遊園(その2)」は、缶コーヒー一本ぶんの休憩にちょうどいい広さです。6丁目の「旗六公園」は、住宅地にぽつんと現れる小さな公園です。
広い場所で思いきり遊ばせたい日は、1丁目の北隣にある荏原南公園まで足を延ばせばいいでしょう。夏から秋には、岩山からミストが出ます。
坂の町の抜け道
南口の階段(2丁目)
南口改札のすぐ右手にあります。坂をぐるりと回らずに、丘の上まで一直線に上がれます。
旗の台一の橋・二の橋(5丁目)
線路を上から越える、二本の跨線橋です。一の橋は階段、二の橋は段差がなく、自転車でも渡れます。

帰り道の、銭湯
新生湯(4丁目)
東京都の「銭湯を町の健康増進拠点に」という事業の第1号店です。浴槽は14種18。二つの浴場が週替わりで男女入れ替わるので、通うたびに景色が変わります。
中延記念湯(4丁目)
昭和の面影を残す湯です。同じ町に、性格のまるで違う銭湯が二軒。その日の気分で選べるのは、帰ってくる町ならではの、ちょっとした贅沢です。

旗の台、半日散歩ルート(ダイジェスト)
2丁目の丘から、南口の階段を下りて駅へ。3丁目の北公園で電車を見送り、立会道路をたどって旗岡八幡と法蓮寺へ。最後は三間通りを渡って4丁目の坂を上り、銭湯でひと風呂。歩いた分だけ、湯がありがたいのです。
【イラスト】半日散歩ルートの簡易地図(2丁目の丘→南口の階段→北公園→立会道路→旗岡八幡・法蓮寺→4丁目の銭湯)/alt:旗の台半日散歩ルート
→ 詳しいルートと地図は「旗の台 半日散歩」で(近日公開)
旗の台の暮らしのデータ|交通・治安・家賃相場・坂
ここからは、少し数字の話をします。町の性格は歩けばわかりますが、暮らしの算段は、数字でしかつけられません。ここは宅建士としての私の出番です。
交通とアクセス
旗の台から乗り換えなしで行けるのは、池上線の五反田と蒲田、大井町線の大井町、自由が丘、二子玉川です。大井町線は急行も停まります。
| 行き先 | 路線 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| 五反田 | 池上線(直通) | 約7分 |
| 蒲田 | 池上線(直通) | 約17分 |
| 大井町 | 大井町線(直通) | 約8分 |
| 自由が丘 | 大井町線(直通) | 約7分 |
| 二子玉川 | 大井町線(直通) | 約15分 |
※所要時間は、Yahoo!乗換案内で調べた目安です(2026年10月時点)。時間帯や急行・各駅停車によって前後します。
賑やかな町へ一本で出られて、一本で帰ってこられる。夜が遅くなっても乗り換えの心配をしなくていいのは、帰ってくる町としては、なによりの美点です。
治安
駅前の商店街は、夜もそれなりに明るく、人通りもあります。一方で、坂を上った住宅街は、夜になると街灯だけになります。静かなのはいいことですが、静かということは、人の目が少ないということでもあります。
数字で確かめたい方は、警視庁が公開している町丁別の犯罪の統計を見るのがいちばん確かです。旗の台1〜6丁目の件数を、丁目ごとに確かめられます。
そして部屋を決める前には、昼と夜、一度ずつ歩いてみてください。同じ道が、時間によってずいぶん違って見えるものです。
家賃相場(間取り別)
| 間取り | 家賃の平均 |
|---|---|
| ワンルーム | 約8.8万円 |
| 1K | 約9.6万円 |
| 1DK | 約11.7万円 |
| 1LDK | 約15.1万円 |
| 2DK | 約15.4万円 |
| 2LDK | 約19.7万円 |
| 3LDK | 約25.3万円 |
出典:アットホーム「旗の台駅の家賃相場」(直近3か月の掲載物件の平均、2026年10月24日時点)
表の数字は、駅全体の平均です。同じ旗の台でも、駅前と坂の上、新しい建物と古い建物とでは、家賃はかなり違います。平均は、この町の真ん中あたりを知るための物差しくらいに思っておいてください。
1丁目は病院と大学のそばで、単身向けの部屋が多い丁目です。2027年4月には、昭和医科大学が川崎市の鷺沼に新しいキャンパスを開き、一部の学年の学生がそちらで学ぶ予定です。学生向けの部屋の動きは、これから少し変わるかもしれません。病院で働く人の住まい探しは、変わらず続きます。
地価と中古マンション(売買目線)
買う側の目で見ると、旗の台は、新しく大きなマンションが建つ余地の少ない町です。古くから家が建て込んできたので、まとまった土地がなかなか出てきません。そのぶん、中古の流通が中心になります。
国土交通省の地価公示(2026年1月1日時点)では、旗の台5丁目の住宅地(旗の台駅から380m)が1㎡あたり83万5,000円でした。2022年の62万3,000円から、4年で3割以上上がっています。前の年と比べても10.6%の上昇です。駅に近い1丁目の商業地は、1㎡あたり127万円です。
中古マンションの実際の取引価格は、国土交通省の不動産情報ライブラリで、旗の台の過去の取引を地図から調べられます。築年数や広さで値段は大きく変わるので、気になる物件があれば、近くの同じくらいの築年数の取引と比べてみてください。
もうひとつ、売買で必ず確かめてほしいのが、住所の区です。旗の台駅が最寄りでも、環七の向こうは大田区です。同じ駅、同じ坂道でも、区が違えば相場も、行政の制度も変わってきます。
坂と地形
旗の台1丁目(高低差 約12m)


旗の台2丁目(高低差 約13m)


旗の台3丁目(高低差 約6m)


旗の台4丁目(高低差 約11m)


旗の台5丁目(高低差 約10m)


旗の台6丁目(高低差 約12m)


旗の台は、駅のあたりがいちばん低く、そこから丁目ごとに坂を上っていく町です。数字にすると、こうなります。
| 丁目 | 高低差の目安 | 歩いた感じ |
|---|---|---|
| 1丁目 | 約12m(ビル4階分) | 東側はほぼ平ら。西の端で、短い距離を一気に上る |
| 2丁目 | 約13m(ビル4階分) | 低地から丘の上へ、短い距離で一気に上る |
| 3丁目 | 約6m | ほぼ平ら。南東の旗岡八幡神社のあたりが少し高い |
| 4丁目 | 約11m | 三間通りの南から、約350mで坂の上の住宅街へ |
| 5丁目 | 約10m | 約350mかけて、なだらかに段々と上る |
| 6丁目 | 約12m(駅へは下り) | 行きは楽で、帰りはゆるい上り。急な坂はない |
出典:国土地理院 数値標高モデル(5mメッシュ)をもとに筆者が計測
自転車で暮らすなら、坂の上の部屋には電動アシストがあると心強いでしょう。ただ、坂にはたいてい抜け道があります。2丁目には南口の階段、5丁目には線路をまたぐ二本の橋。部屋を見に行くときは、駅からいちばん楽な帰り道も一緒に探してみてください。地元の人は、みんなそれを知っています。
旗の台の商店街と買い物
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旗の台には、大小あわせていくつもの商店街があります。全部を紹介すると電話帳のようになってしまうので、ここでは性格の違いだけをお話しします。
東口通り商店街
駅の東口を出た正面にある通りです。昭和医科大学病院への通り道でもあるので、旗の台でいちばん人の流れが多い通りです。
旗ヶ岡商店街
東口通りから一本東に入った通りです。消えた旗ヶ岡駅の名前を、いまも看板に残しています。
三間通りの商店街
駅の南を東西に走る三間通り沿いに、いくつもの商店街がつながっています。4丁目の側は八百屋やスーパーが並んで、にぎやかです。5丁目の側へ行くと、店主の顔が見える個人店がぽつぽつと並ぶ、落ち着いた通りになります。通りつづきなのに、空気がまるで違います。
稲荷通り商店会
中原街道から南口の踏切までの通りです。路地を一本入ると、お稲荷さんがあります。
スーパーは、目的に合わせて使い分けるのが旗の台流です。
| 店 | 場所 | 使いどころ |
|---|---|---|
| オオゼキ 旗の台店 | 駅前 | 魚と肉の質で選ぶ日に。10:00〜21:00 |
| まいばすけっと 旗の台店 | 駅前 | 朝早くと夜遅く。7:00〜24:00 |
| オリンピック 南千束店 | 6丁目寄り(南千束交差点) | 食品から日用品、電球の替えまで一軒で |
| サミットストア 荏原4丁目店 | 1丁目の北隣 | 1丁目の暮らしの台所 |
【営業時間は公開前に各店の公式情報で確認】
元料理人として一つだけ付け加えるなら、オオゼキの魚と肉の売り場は、値段以上の仕事をしています。少し丁寧に作りたい日の献立は、売り場を見てから決めるのがいちばんです。
グルマンドウォーカーの旗の台めし|ひとりで入れる個人店
旗の台の店は、どこも大きくありません。カウンターだけの店、席が十あまりの店がほとんどです。そのかわり、店の人との距離が近い。帰り道にひとりで寄って、一皿食べて、家に帰る。この町の店は、そういう使い方にちょうどいい大きさをしています。
数は揃えません。私が実際に暖簾をくぐって、また行きたいと思った店だけを並べます。
curry but curry(2丁目)― 線路沿いの南インド

池上線の線路沿いにある、南インド料理とスパイスカレーの店です。私はアレッピーフィッシュカレーとポークビンダルーのあいがけを頼みました。バスマティライスに、甘酸っぱい角切り野菜のアチャールとパクチーを合わせて口に入れると、酸味と辛味が交互に追いかけてきます。店内にはジャズ。ひとりでも、時間がゆっくり過ぎていきます。火曜定休、平日は夜のみの営業です(昼の営業はInstagramで告知)。
カフェリア(2丁目)― 駅前の2階の、木目の喫茶店

旗の台駅の東口改札の目の前、建物の2階にある1977年創業の喫茶店です。階段を上がると、正面にカウンター席とオープンキッチン、左手には駅前を見下ろす大きな窓。木目の店内は全席禁煙で、昔ながらの喫茶店の空気を気兼ねなく味わえます。ナポリタンは800円、1,100円のセットにすると飲み物とミニサラダが付きます。営業は8時から18時で、11時まではモーニングもあります。支払いは現金のみです。
Osteria Rana(3丁目)― ひとりで座れるイタリアン

カウンター8席とテーブル2卓、全部で14席ほどの小さな店です。イタリアンは誰かと行くもの、という思い込みを、気持ちよく裏切ってくれます。カウンターに座れば、ひとりでも面白い一皿に出会えます。
阿美パン(3丁目)― 赤い店構えの、台湾のパン

大人ひとりがやっと入れるほどの、真っ赤な小さなパン屋です。店主は台湾中部の出身。名札が赤いのが台湾のパンなので、はじめてでも迷いません。肉でんぶをたっぷりまとった肉鬆パンは、最初の一口のざらざらが、噛むうちに旨みに変わっていきます。翌日に食べても、ちゃんとおいしい。帰り道に買って、明日の朝の楽しみに回せます。
沖縄キッチン kukuru°(3丁目)― 阿美パンの斜め向かいの、ラフテーそば

ピンクと白のオーニングが目印です。先に席を取ってから、券売機で注文する決まり。箸で持ち上げると、ずっしり重い大きなラフテーがのっています。鰹節と昆布と豚のスープは、やさしいのに、あとを引きます。セルフのさんぴん茶を飲みながら待つ十分ほどが、なんだか旅先のようです。
帰り道の手みやげに
4丁目の沖田精米のおはぎは、会津のもち米をほとんど潰さずに使い、甘さ控えめのつぶあんをたっぷりのせたもの。午前中で売り切れることもあります。同じく4丁目のマロニエ洋菓子店の「くるみ第3楽章」は、持ち帰りのみ。誰かの家に帰るなら、どちらかを提げていきたいところです。
【営業時間・定休日は公開前に各店の公式情報で確認】
季節の旗の台
旗の台の季節の行事は、どれも大きなお祭りではありません。遠くから見物に来る人はあまりいなくて、町の人が町の人のためにやっている、という風情です。
春|立会道路の桜
1丁目の病院の北側、ゆるやかなカーブの桜並木。荏原南公園の前の道も、桜並木になります。
秋|旗岡八幡神社の例大祭と、法蓮寺の御会式
9月には、旗岡八幡神社の例大祭があります。10月には、法蓮寺の御会式。池上本門寺のような人波はなく、万灯が静かに町内を回ります。
冬|旗岡八幡神社の甘酒祭り
江戸時代、弓の腕を競った武士たちが、甘酒で疲れを癒したのが始まりと伝わる行事です。
【日程は年によって変わるため、公開前に確認】
人混みに揉まれずに、季節がひとつ進んだことを知る。帰ってくる町の季節は、そのくらいの大きさがちょうどいいのかもしれません。
→ 季節の行事をもっと詳しく「旗の台の季節の行事」(近日公開)
旗の台に住むのが向く人、向かない人
はじめに、旗の台は六人きょうだいのようだと書きました。最後に、どのきょうだいの家に帰るのが向いているかを考えてみます。
| こんな一日の終わりがほしい人 | 帰るなら |
|---|---|
| 大きな病院がそばにある安心がほしい。単身で身軽に暮らしたい | 1丁目 |
| 帰り道に、ひとりで一皿食べてから家に帰りたい。坂の上の静けさもほしい | 2丁目 |
| カウンターで一杯やってから帰りたい。神社や緑道のそばで暮らしたい | 3丁目 |
| 銭湯で一日の疲れを流してから眠りたい。商店の人と顔なじみになりたい | 4丁目 |
| にぎわいと静けさ、どちらも手放したくない | 5丁目 |
| とにかく静かな夜がほしい | 6丁目 |
反対に、旗の台が向かないのは、こんな人です。
- 家の近くで、夜遅くまで遊びたい人。旗の台の夜は、早めに静かになります。遊ぶなら、五反田か大井町へ。
- 坂をまったく歩きたくない人。駅のまわりを離れると、多くの丁目で坂が待っています。
- 大きなショッピングモールや映画館を、歩いて行ける場所にほしい人。
- 救急車のサイレンが気になる人。とくに1丁目は、病院のすぐそばです。
賑やかな町で遊び、静かな町に帰る。旗の台は、その「帰る」のほうを、六通りに用意してくれている町です。
旗の台についてよくある質問
Q. 旗の台は何区ですか?
A. 旗の台1〜6丁目は、すべて品川区です。ただし、4丁目や5丁目の南で環七を越えた先や、6丁目の西側は大田区になります。駅名で部屋を探すと大田区の物件も出てくるので、住所の区を確かめてください。
Q. 旗の台の名前の由来は?
A. 3丁目の旗岡八幡神社に由来すると伝わります。平安時代、源頼信がこの高台に陣を張り、源氏の白旗を掲げて戦勝を祈ったことから「旗岡」と呼ばれるようになりました。
Q. 治安はどうですか?
A. 駅前の商店街は、夜も明るく人通りがあります。坂の上の住宅街は、夜になると人通りが少なくなります。具体的な件数は、警視庁が公開している町丁別の統計で確かめられます。部屋を決める前に、夜にも一度歩いてみることをおすすめします。
Q. 坂は多いですか?
A. 駅のまわりは低地で、多くの丁目は駅から離れるほど坂を上ります。高低差は、2丁目で約13m、4丁目で約11m、5丁目で約10mです。6丁目は、駅へ向かって下り坂になります。2丁目の南口の階段や、5丁目の跨線橋など、坂を避ける抜け道もあります。
Q. 昭和医科大学病院(旧・昭和大学病院)の近くに住むのはどうですか?
A. 大きな病院に歩いて行ける安心感は、何ものにも代えがたいものです。一方で、救急車のサイレンは日常的に聞こえます。音が気になる方は、病院から離れた5丁目や6丁目も候補に入れてみてください。
Q. 一人暮らしに向いていますか?
A. 向いています。家賃の平均はワンルームで約8.8万円、1Kで約9.6万円。ひとりで入れる個人店が多く、2路線で五反田にも大井町にも一本で出られます。遊ぶのは外で、帰ってくるのは旗の台。そういう暮らし方の人には、ちょうどいい町です。
旗の台での住まい探し・売買のご相談
六つの丁目を歩いてきて思うのは、旗の台は、どこに住むかで暮らしがずいぶん変わる町だということです。駅までの道が上りか下りか。帰り道に灯りのともる店があるか。夜に聞こえるのは電車の音か、虫の声か。物件の図面には、そういうことは書いてありません。
「坂を通らずに駅まで帰れる部屋はありますか」「静かな丁目で、戸建てを探したい」「旗の台の家を、町のことをわかっている人に相談して売りたい」。そんなご相談に、旗の台を歩いてきた宅建士のジカビーがお答えします。
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【出典】家賃相場:アットホーム/地価:国土交通省 地価公示(2026年)/地名の由来:旗岡八幡神社の由緒/標高:国土地理院/地図:国土地理院、© OpenStreetMap contributors